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ストーリー

人を繋ぐ幻の桜のお話

長い歴史を持つ日本橋には多くの伝承や逸話が語り継がれてきたが、この地に幻の桜が存在していたことはご存知だろうか。

医療分野において革命的ともいえる進化を遂げようとしていた江戸時代、薬や医者は民衆にとっても大名にとっても非常に重要されていた。町医を志す人々は多くいたが誰もが医者になれる訳ではなく、その道は長く険しかった。その町医を目指す1人の青年がいた。その青年は懸命に勉強し、若くして町医の助手として働くようになり誰もがその将来を期待していた。その青年の身にある不思議な出来事が起きたのは、桜が咲き始めた春のことだった。

その時期は、花見一色で町が賑わい始めた。青年は桜を見るのが大好きで、この季節になると桜並木をよく歩いていた。そんなある日、不思議な生え方をした一本の桜の木が青年の目に止まった。その桜に不思議な縁を感じた青年は、花びらをお守りとして懸守りにしまい、しばらくの間その桜を眺めていた。

どのぐらいの時間が経っただろうか。桜を満喫した青年が帰ろうとした時、向こう岸に老人が倒れているのを見かけた。青年は駆け寄ろうとするも、橋はなく向こう岸へ向かうことが出来なかった。時折、向こう岸から老人が苦しむうめき声が聞こえ、青年は何とかして渡れないかと考えたが、どうすることもできず、懸守りを祈るように握りしめていた。しかしその時、風が吹き付け、あの不思議な生え方をした桜の花びらが一斉に向こう岸に集まり始めた。そして、まるでこちらと向こう岸とをつなぐ橋のように花びらの道が出来たのだ。青年は、驚きを隠せなかったが、その桜の道を渡り向こう岸へ辿り着いた。青年が倒れている老人を診ると、その様態から病に冒されていることに気がつき、籠に入っていた薬を調合して老人に飲ませた。すると、みるみるうちに老人の様態が回復し、老人は一命をとりとめたのであった。

しばらくして、桜の橋は風に吹かれて消えていったが、桜の橋は老人の命を救った"幻の桜"として町中に知れ渡り、青年は、その幻の桜の花びらが入ったこの懸守りを肌身離さず大切にしていたそうだ。その後、青年は助けた老人の孫娘と恋に落ち結ばれた。まるでこの懸守りが2人をつないだかのように…

ところが、この話が町中に広まるようになると、青年が身に着けている懸守りに不思議な力が宿っていると町中で噂されるようになり、懸守りを狙う者が現れるようになった。青年は、来世の自分のみ見つけられるように暗号を残し、この懸守りを隠すことにした。

そして、時が流れつい先日、青年が残した書物を発見したある若者がいた。その若者は青年の意思を継ぐかのように、新たな暗号を書物に書き加え、この暗号を解いた人のみ懸守りを見つけられるように日本橋のどこかに懸守り隠し、暗号を一般公開することにした。

桜が咲く季節に、この懸守りが人をつなぐ新たな懸け橋となるように…